
2025年04月23日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア独占禁止庁 “ビルジャ”での水産物取引 最低数量義務設定を提案]
ロシア独占禁止庁は、今般、水産物製品の一部を、最低数量義務を設定した上で、“ビルジャ” (Биржа:商品取引所)を介して流通させることを提案する報告書を発表した。
水産物製品の一部を“ビルジャ” を介して流通させることを義務化する提案は、何度も頓挫している。
この提案は、流通過程における価格形成の透明化、消費者保護を大義としている。
過去、ロシア財務省が提出した当該法案には、スケトウダラ、ニシン、マダラ、カラフトマス、シロザケ、ベニザケ等の冷凍原魚、フィレ等の製品等を対象に全体の25%を、“ビルジャ”でのオークションで販売することの義務付けすること等が盛り込まれていた。
一方で、業界は、“ビルジャ”での取引が魅力的であれば、義務付けしなくても、経済原理に基づきこれを利用すると指摘、強く反対を表明している。
水産物流通業界団体の代表者は、“ビルジャ”での強制的取引の導入は、プラスの影響を与えることがないどころか、サプライチェーンにもう一つの、まったく不要なリンクが追加され、ロシアの消費者に届くまでの途中に行政上の障壁が追加されるだけだと批判している。
“ビルジャ”でのオークションによる製品取引構想は、1991年のソ連崩壊直後のロシアから脈々としてあり、それが、“リアル”から“電子”に手法が変わっただけで、背景には、取引過程の透明化を大義とした、税収の確保等がある。
しかし、この約35年間、“ビルジャ”でのオークションの構想が何度も立ち上がり、そして頓挫して定着しない理由は、特に、ロシア極東漁業の製品が冷凍であり、生鮮品のような価格の振幅を示す競争が発生せず、いわば“場外取引”に合理性があるからと考えられる。