2023年05月26日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア スケトウダラ漁業 生産成長も厳しい財務内容]
昨年2022年、ロシア極東海域でのスケトウダラの漁獲量は190万トンに達し、TACの開発率は92%だった。
ロシアの漁業生産の約40%を当該漁業が占めている。
この10年間、スケトウダラの資源評価は増加傾向で高位を維持、四半世紀で最大であり、来年2024年のTAC設定として、今年2023年より更に20万トン増の228万5,000トンが勧告されている。
しかし、ロシア漁業庁が発表した暫定的データによると、昨年2022年の漁業、養殖、加工に従事する企業の売上高が総額8,660億ルーブルで前年比7%増加したものの、税引き前利益は1,580億ルーブルで30%以上減少した。
スケトウダラのヨーロッパ市場(スケトウダラのフィレの主要市場)は、2022年に24万7,000トンまで縮小した。
2022年、中国の加工市場は復活し、ロシア産スケトウダラを55万6,000トン輸入したが、ロシア漁業の売上高の伸びは物流費等の高騰で相殺されてしまった。
ロシア産H&Gを原料とした中国加工フィレのヨーロッパへの物流コストは、新型コロナウイルス拡散防止対策以前のレヴェルと比較して3倍-3.5倍に、また、中国への輸出要件を満たすための消毒を含めたコストが25%-30%、それぞれ増加、これに為替要因が加わった。
更に、投資目的漁獲割当の設定による漁船建造プロジェクト等の債務が業界に過大な負荷をかけている。
2019年、業界投資額は22.4%増加して450億ルーブルとなり、昨年2022年には1,400億ルーブルに達した。
これらの資金調達はクレジット、つまり、銀行からの債務であり、一方、純利益が1,170億ルーブルで、これを下回っていることにより、厳しい財務内容を指摘することができる。